毎日新聞社会部「縦並び社会 貧富はこうして作られる」

石川啄木が、「じっと手を見る」と短歌にうたったことはよく知られています。働けど働けど、という思いの内容です。

最近NHKテレビがドキュメンタリーで注目される放映を行いました。そして「ワーキング・プア」という言葉がたいへん知られる言葉になりました。収入が低く、働いてもその場しのぎの収入にしかならない労働条件の人たちを指す言葉です。しかも、拡がっているとのこと、深刻な話です。

毎日新聞社が今年7月まで連載していた企画「縦並び社会」シリーズを、単行本として出版しました。これには、派遣労働者、あるいはトラック運転手などの労働実態が生々しく描かれています。ワーキング・プアの言葉が思い起こされる内容でした。

しかし、「縦並び社会」は、単に厳しい雇用環境を示すに留まっていません。それではこれからどうしていけばよいのか、世界にも目を向け、さまざまな人の発言も紹介し、気づいたらどのように考えていくべきか、行動していくべきかの示唆をたくさん提供しています。

同様の警鐘を鳴らす、あるいは問題を指摘する声は、たくさんといってよいほど出ています。その中の一冊としてもおすすめであり、類書のなかでも光るものであることは間違いありません。

以上 (前荷 進)