副島隆彦氏も言う。「南京大虐殺はあった」

評論家副島隆彦氏の著作「歴史に学ぶ知恵 時代を見通す力」(PHP研究所 2008年8月刊)を、たまたま読む機会がありました。いろいろ積極的に発言している人らしく、同氏の著書は他にも見かけます。これまで読んだことがなかったのです。本人のある発言が目にとまったことから、1冊を読み上げることになりました。

それは「南京大虐殺はあった」(282ページ)のところでした。

「いまだに『南京大虐殺はなかった』論を言い立てている日本の言論人たちがいる。愚かな人々である。日本軍があのときに南京市内で殺した中国人は、最低でも2万人から4万人はいた。私はずっと秦郁彦(はた・いくひこ)氏の説を支持し続けている。『虐殺はあった』のである。」

「外国の土地に200万人も派兵しておいて、それで『自分たちは侵略などしていない。中国民衆を救いに行ったのだ』などと、まだ今の今でも思い込んでいる。「日本は正しかった」と言い続ける愚か者たちがいまもたくさんいる。繰り返し言う。外国に他の国の軍隊が駐留していたらそれを侵略と言うのだ。歴史的な視点と、国際法の冷静な見方からすれば、それを侵略と言う。反論があればしてみてください。」

経済畑、あるいは投資畑の仕事をしている人で、南京大虐殺などについて、これほどはっきり言及する人はそれほど多くはないのではないでしょうか。それは一面残念なことでもあります。もっとも「歴史に学ぶ知恵」との副題で、江戸時代までさかのぼって、中国からの思想的影響まで広げて、自分の考えを開陳していますから、言及は当然かもしれません。

本書は、引用した部分だけのことを語っているものではありません。もっと幅広い内容で論点の中心は別です。江戸時代の思想家と富永仲基(とみなが・なかもと)を評価し、松下幸之助が一番偉いとしています。金融や投資ブームで一喜一憂している人々に反省を促したいというのが本書の趣旨ですか、熱意がこもった本だと思いました。

副島氏の多面的な論理展開や理由づけ、私にはとてもすべてわかったといえるものではありません。豊富な学識に基づく内容でもあり、ついていくのには苦労しました。

でも、思いを率直に語る姿勢、自分に正直であろうとする姿勢には、教えられたと思いました。さまざまに発言する人が多いのだなということに改めて気づかせてくれました。何よりも金融バブルに対する厳しい態度には同感しました。

以上 (あほうどり) 090417