スティーグ・ラーソン「ミレニアム」3部作を読んで

原作者のスウェーデンのジャーナリスト、スティーグ・ラーソン(1954−2004)の世界的ベストセラー小説「ミレニアム」です。母国でと米国で映画化もされました。

スウェーデン映画(1部、2部、3部の3本)は見ていませんが、そのリメイク版(第1部 ドラゴン・タツゥーの女)がアメリカで作られ、今年日本でも封切られました。

俳優や監督に惹かれ、見に行きました。それがハヤカワ文庫全6冊を読みきるきっかけになったのです。2009年7月に翻訳されて単行本(早川書房)が出版されていましたが、そのときは私の関心をひきませんでした。ところが第1部「ドラゴン・タツゥーの女」の映画で、第1部から第2部「火と戯れる女」第3部「眠れる女と狂卓の騎士」を読むことになりました。

映画以上に面白い、映画もよくつくられているが、原作のすべてを描くところまでいっていない、それが私の読後感でした。世界で翻訳され2011年6月時点で6
千万部(最終巻解説より)という売り上げだそうです。ごくラフな推定でも、全読者が6巻すべてを購入したとすれば、1千万人いるということになります。その人たちは、読むことについては目利きの部類に入るほうではないかと思うことになりました。

「ミレニアム」は主人公の男性ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストの働く出版社ミレニアム(同名雑誌を発行)からとられていました。彼は発行責任者であり共同経営者であり記者なのです。主人公はもう1人いてリスベット。サランデスというフリーの調査員です。彼女が本当の主人公なのです。

リスベットの生い立ち、謎が、どんどん明らかにされていく、末広がりの内容の小説です。世の中をまっすぐ見つめようという著者の姿勢がよく示された作品です。話としてもめっぽう面白い。民主主義とは守られるべきもの、守らなければならないもの、という気持ちが伝わるものになっていました。傑作であり快作です。

2部3部も映画化され、それはまたぜひ見なくてはという気持ちにさせられた体験となりました。読者のはしくれの感想です。

2012年3月30日 前荷 進