日本経済新聞井上亮記者・北海道新聞とこ住嘉文(とこすみ・よしふみ)記者

10月15日、新聞週間ということで、新聞各紙特集を組んでいます。日本経済新聞北海道新聞それぞれ大きな仕事を評価された記者を登場させ、発言させていました。おふたりの気概のある発言、心強さを感じましたので、紹介させてもらいます。

日本経済新聞は、元宮内庁長官冨田朝彦氏(故人)のメモを入手し、記事を執筆した井上亮記者です。
井上氏は、2006年度の新聞協会賞を受賞することになりました。7月20日に報じた井上記者は、「昭和天皇靖国神社A級戦犯合祀に不快感』」を示すメモを6月20日に手帳より発見、飛び上がるほど驚きました。そしてきちんとした裏付け取材の上発表しました。

井上記者の発言のしめくくりです。
「得た情報の真偽を確認し、準備が整えば何ものにもひるむことなく速やかに報道する。記事の主眼を『昭和天皇靖国不参拝の理由が明らかになった』という『現代史の事実発掘』に置いて、裏付け取材に全力を挙げた。
仮にまったく別の理由を語る天皇の言葉が書かれていたとしても、同じような姿勢で報道しただろう。重要なのは事実である。どんな論議も、事実を踏まえないものは不毛であり危険だ。」

北海道新聞のむらすみ・よしふみ記者は、今年2月8日の北海道新聞で、吉野文六氏(87歳)証言を伝えました。1971年の沖縄返還協定当時の外務省アメリカ局長が、日米密約を政府側として初めて認めたのです。このときに、毎日新聞の西山記者が密約の証拠を入手し報道したことに対し、政府は西山記者と提供した外務省職員を逮捕、裁判にかけました。国会でも裁判でも、吉野局長を含めた政府側は「密約はない」と主張しつづけ、ふたりは有罪判決を受けることになります。

密約が存在したことが、アメリカ側資料から確認されました。今、西山氏は改めて国に対し裁判を起こし戦っています。その裁判の最中に出たことになった元局長吉野氏の証言は、政府が国民をあざむいていた(いまだに認める態度ではありません)ことを白日の下にさらしました。他紙も報道し、とこすみ氏は今年のJCJ賞を受賞しました。

とこすみ氏の発言のしめくくりです。
「米国では『日光消毒が一番』と言う。秘密は悪の温床。おてんとさま、つまり国民にさらすのが一番よい。
今月6日の衆院予算委員会田中真紀子氏が安倍晋三首相の対北朝鮮外交をこき下ろすと首相は気色ばんで反論した。『金正日総書記のご子息が日本に入って来て、それを送り返したのは当時の外相がなされた判断だ』
ご子息とは2001年、偽造旅券で入国しようとした男だ。政府は中国に強制送還し、タカ派は『逮捕もせず弱腰外交』と怒った。その時の外相が、田中氏。答弁で一矢報いたかの安倍首相だが、実は政府はこれまで、男が金総書記の長男正男氏と公式に認めていない。『秘密』を首相がばらした。法務省によると、いつ決めたかは言えないし、発表もしていないが、今は金正男氏の可能性が高いと判断しているのだという。
政府の秘密なんて、この程度だ。だから新聞記者は、負けられない。」

以上 (世話人) 061015