日本経済新聞1月3日連載「三度目の奇跡」第2回で秋丸機関の報告書言及

日本経済新聞1月1日より連載「三度目の奇跡」がはじまりました。「第1部私は45歳」からです。この2回目1月3日が「現実を直視、今年こそ」とし、「開戦前、焼き捨てられた報告書」として1941年半ばにできた「秋丸報告書」について言及しています。陸軍が秋丸陸軍中佐をトップとした「戦争経済研究班」で1年半かけてまとめた報告書です。その内容は英米との戦争では国力差は隔絶し持久戦には耐え難いとの結論だったそうです。

日本経済新聞はそれがどう扱われたかで興味深い事実を述べています。

「(報告会に)列席したのは杉山元参謀総長ら陸軍の首脳約30人。じっと耳を傾けていた杉山がようやく口を開いた。『報告書はほぼ完璧で、非難すべき点はない』と分析に敬意を表しながらも、こう続けた。
『その結論は国策に反する。報告書の謄写本はすべて燃やせ』」

「見たくないものは見たくないー。秋丸機関はほどなく解散し、現状認識を封印した戦争の結末は悲惨だった。」

たいへん興味深い言及です。私もはじめて知る具体的指摘です。行うべきではなかった日米開戦、それを当の軍部がほおかむりしたまま、戦争の道へ走ったのです。すでに中国との戦争が泥沼化しているなか、さらに破滅破綻の道へつきすすんだのです。その無茶さの一例としてまことに好例を報じてくれました。

連載企画「三度目の奇跡」はすべり出しから危機感と警鐘乱打の内容を感じさせます。その意味で現実直視の必要性を重視しようというのは当然の姿勢です。期待して読んでいくつもりです。

現実直視の点からも、先人の誤りをただしく認識すること、そして見ている「現実」と「それに対する判断」とを慎重に見定めることが肝要なのはいうまでもありません。おそらく当時秋丸報告書と内容が重なる意見や論文が他にもあったでしょう。秋丸報告書でさえ封印の扱い、その他もどのように扱われたか想像に難くありません。その反省から汲み取るものは何か、読者ひとりひとりにとっても課題です。

財務省が、「消費税率アップ」という姿勢であることそれしか言っていないということはどうなのでしょうか。今の日本経済に至ったことへの掘り下げた総括がないように思われてなりません。戦前の軍部が事態にまともに向き合おうとしていなかったことと、今の財務省は似てはいないかと想像することは楽しいことではありません。しかし、わからないことに対してだからこそ、「現実を直視し判断をし意見を持つ」よう学ばねばなりません。そのことに日本経済新聞「三度目の奇跡」は、気づきを私にも与えてくれたようです。そして今は必要な知識は得られる時代ですから。

以上 (世話人)110103