高山文彦「糾弾」(週刊ポスト連載中)は重い投げかけ

週刊ポスト㋄6日13日合併号、高山文彦氏の「糾弾」第33回でした。自然エネルギー志向をはっきりさせた孫正義氏インタビュー記事につられて購入、そのなかで「糾弾」に出会いました。重い内容重い問いかけです。その投げかけに私もはっとさせられました。

福岡県であった「部落差別自作自演事件」をドキュメンタリーとして連載していました。福岡県のある町で起こった「部落差別事件」、じつは被害者としてみられていた人間の自作自演事件でした。著者高山氏も、自作自演を行ったその同盟員をかかえていた部落解放同盟筑後地協も、なみなみならぬ決意でこの連載の重みに耐えているのではないかとの印象を持ちました。しかし今後のためにうみを出すという意味では、たいへん勇気ある内容と受け止めました。

高山文彦氏はおさえた書き方でむしろ淡々としている、とさえ思いました。第33回では「脅迫」されていた本人が逮捕され逃れぬ物証で自白するという驚天動地の展開のあと、心配して問う人たちに本人が改めて自分の行為であったことを認めるという内容です。高山氏はどうしめくくっていくのだろうと思いました。過ちは誰がやっても過ち、その克服の方向は、ということになるのでしょうか。さらなる健筆期待したいものです。

人間が人間を差別する、日本における典型が藤村が「破戒」ではじめて描いた「部落差別」でした。それがさまざま現代まで残り尾をひいています。そのことを「糾弾」は改めて問うことにもなっています。「糾弾」という題にも、差別とそれへの対抗ということとの難しさ複雑さを示しているように思われてなりません。

北海道にもアイヌ差別、いまだに残っていると言われています。こちらは民族差別で部落差別とは違いますが、やはり重い現実でもあります。

話変わりますが、地味で重いテーマをとりあげた連載に踏み切った週刊ポスト編集部(小学館)の見識に敬意を表します。

2011年5月1日 前荷 進