稲葉圭昭「恥さらし 北海道警悪徳刑事の告白」

10月に講談社より「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」が出版されました。著者は、元北海道警察警部・銃器対策課の稲葉圭昭氏です。

「恥さらし」は、悪行をこれでもかこれでもかと書き綴ったものではありません。冷静かつ淡々と、犯した間違いを語り、その要因などに視野を広げた内容です。本人は、現職警察官でありながら、覚醒剤の使用、営利目的の所持、銃刀法違反の罪で、2003年懲役9年の判決を下され、服役しました。この9月23日に刑期満了となるまで、刑務所と仮出所してからは保護観察の立場だったわけでした。

たいへん重く許されない違法行為を行い、罰されたことについて、まっすぐに受け止めた内容です。しかし「恥さらし」は、警察の組織犯罪というべき捜査と失態を演じた北海道警察の驚くべき隠蔽工作を明らかにした、告発の書ともなりました。稲葉氏が、本書を出すにいたるまでの葛藤は、想像もできないほど、大きなものであったにちがいありません。悪徳警官であっただけ、その悩みは深かったでしょう。でも稲葉氏は自らの良心と反省の上にたって、勇気をふるいおこしたわけでした。

稲葉氏をとかげの尻尾として切り捨てた北海道警察への怒りは、原田宏二氏の裏金告発のひとつにつながりました。稲葉氏は服役していた千葉刑務所で原田氏が出たテレビ番組を見たことを述べています(248ページ)。

多くの人が、家族が知人が友人が稲葉氏の更正と復帰のために心を砕きました。稲葉氏の言葉の中にも、最後の原田氏の解説にもそれは現れています。

重い問題提起を稲葉氏は身を持って行いました。原田宏二氏の「たたかう警官」、あとに続いた斉藤邦雄氏の「くにおの警察官人生」とはまた違いますが、日本警察がこれからあってほしいことへの提言としては共通するものがありました。

多くの人に読まれてほしい本です。

2011年10月11日 与謝名 阿寒

追記 読んで興奮したせいか、書名の誤記がありました。お恥ずかしいかぎりです。