「橋下主義(ハシズム)を許すな!」緊急出版の意味を考える

2011年11月15日発行でビジネス社より「橋下主義(ハシズム)を許すな!」が出版されました。11月27日投票で大阪府知事選、大阪市長選が戦われています。

橋下徹(はしもと・とおる)氏と彼が率いる「大阪維新の会」、その言動が「ハシズム」とも言われており、それについて反対の論者による反橋下主義宣言の本でした。論者は内田樹山口二郎香山リカ薬王院仁志の各氏という多彩な顔ぶれ、しかも最終第4章は橋下氏の妄言録のてんこもり収録と、いきとどいた内容でした。
この9月26日、日本ペンクラブ浅田次郎会長)が、橋下大阪府知事と彼がひきいる「大阪維新の会」の大阪府議会での大阪府教育・職員金条例案に対し、おかしい反対すると声明を出しました。それが目に付き、いったい何のことだろうかと思っていたところでした。その後事態はどんどん進み、橋下氏が大阪府知事を急遽辞任し、大阪市長選に立候補、府知事選には「大阪維新の会」の府議をかつぎだし、あろうことかダブル選挙となりました。橋下氏は「大阪市の権限、財源を奪いとる」気持ちからだそうです。

大阪の地は遠く、あまりよくわからないまま、マスコミ報道に触れていた状況でした。その「騒動」に関し、橋下批判の立場からの本が緊急出版されたのです。

内田樹(うちだ・たつき)氏が第1章、政治の教育介入を意図する動きについて論陣を張っています。第2章が山口二郎氏が第2章で橋下政治の姿を、第3章では、山口氏香山リカ氏、薬師院仁志氏の鼎談で、「橋下主義(ハシズム)を斬る)でした。それぞれ、講演鼎談を収録して加筆したものです。

詳細を紹介するスペースはありませんが、歯に衣を着せない、直言です。これまでの橋下氏と維新の会の言動が「驚くべき」ものだったことを、私に初めて理解させてくれました。言論出版の自由とはありがたいものです。権力だけをほしがり、言うことはバラバラ、マスコミで振りまかれたイメージをふりまくことで期待感をあおる、などの懸念のある御仁であること知らされました。

橋下氏、堺屋太一氏との対談本を新書で、出版しています。それはどうやら、聞こえの良いことを羅列し、現実に行っていることにオブラートをかけているようだと、すでに読んでみたものとして、改めて気づかされました。つきあわせてみると、橋下氏が新書で何を語り、何を語っていないか、よくわかるものとなっていました。調子をあわせているとしか受け止められない堺屋太一氏です。堺屋氏の著作をいくつか読み、感心もした私には、まことに残念なそこの浅い堺屋氏の姿でした。

「あんなに色がはっきりした人が現れたのだから、これを考え、議論し、選択するチャンスととらえて、私たちもいろんな色になりながら議論すればいいのではないでしょうか」(香山リカ氏)
「事実からスタートして議論していく。この機会に、日本の命運を考えていきたい。自由に、取り組んでいってほしいと思います。(山口二郎氏)
(いずれも116ページ)

閉塞した社会を生きる市民のやり場の無い不平不満のたまりにたまった蓄積(2ページ)が独裁標榜の「橋下人気」を支えているとのこと、香山山口両氏の発言、
まことに市民としての心意気ではないでしょうか。これからの我々の指針とすべき提言です。

ファッショ的言動の橋下氏、大阪府知事としてもふさわしくなかったし、大阪市長としても問題ありすぎなのではないでしょうか。かって、乱暴極まりない行動をした鹿児島県の某市長がいました。ご本人はやり方が通用しなくなり、市長の座を失いました。はしゃぎすぎ、言いっぱなし、なにか通じるものがあるような気がします。

そうすると、大阪市長選立候補常連の共産党がすでに擁立した候補が辞退し、平松候補に一本化して橋下氏と戦うとしたこと、ハシズムの問題点ひどさ、直視したからなのでしょうか。それは一つの見識かもしれません。共産党こそ戦後憲法と民主主義のなかで市民権を得てきた存在なのですから。

以上 前荷 進  2011年11月22日