松原隆一郎「『橋下徹総理』という悪夢」

月刊誌文藝春秋2012年1月号に、東大大学院教授(経済学)松原隆一郎氏が「『橋下徹総理』という悪夢 稀代のポピュリストが日本を破壊する?」を寄稿しています。

「私は生まれてから高校まで神戸の街で育った関西人です。普段は東京で暮していますが、今でも大阪には並々ならぬ愛情を持っています。商人の街・大阪は、これまで東京に対する「西の横綱」としての誇りを持ち続けてきました。人形浄瑠璃のような古典芸能や吉本興業、新世界や対照駅などの下町に至るまで独自の文化を発信するパワーを持っていたのです。」で文章ははじまっています。大阪府知事を任期途中で辞任し、大阪市長選に立候補した橋下徹(はしもと・とおる)氏が、当選したことについて、先に向けて懸念と危惧を指摘していました。

よくまとまった寄稿であり、関心持った方にぜひ読んで欲しいものと受け止めました。議論を尽くしていくことが必要との姿勢が貫かれていました。いくつか引用させてもらいます。

「異様なほどの盛り上がりを見せた今回のダブル選ですが、大阪の外から冷静に見つめていると、先行きに不安を抱かざるを得ません。もともと商人の街である大阪には、「お上には頼らない」という気風があったはずです。それなのに一人の権力者が全てを変えてくれるというような熱狂が生じたのは、とても危険な兆候に思えます。」

「橋下氏の特徴は、”ダメ”であることの絶対基準や実例を挙げないことです。しかもテレビに出演していたタレント弁護士出身だけあって、分かりやすい事例を切り取ってくるのが巧みです。テレビのスピードはどんどん速くなっていて、十秒に一回面白いことを言わないと取り上げてもらえない。お笑い番組の影響もあるのでしょうが、十秒に一回がチャンネルを変えるメルクマールになっています。それが言えるようなワンフレーズの政治家だけが持て囃されていくのです。」

「結局、橋下氏は『「大阪都」になれば経済成長する』と刳りかえすばかりで、例えばなぜパナソニックが東京に出て行ったのか、なぜトヨタが大阪に出てこないかといった建設的な議論が一切出てこないのです。」

松原氏が、なぜ「悪夢」と考えるのかのことが、率直に語られています。引用した以外のこともさまざまな切り口で触れており、いきとどいた内容でした。一読した私も、遠い土地のことではなく、考えていこう、考えることが必要と、感じさせられた機会になりました。

実は1月号は、別の目的で購入したものでした。読みたい記事は別にあり、目的を果たしたあと、松原隆一郎氏のタイムリーな寄稿に気がついたのでした。

何が関心記事であったのかというと、「清武英利独占手記 ナベツネ栄え、野球は枯れる」でした。あわせて「巨人軍を憂う職員有志の会の告発」もあって、このふたつは、プロ野球の今後を私に考えさせる事になりました。はるかな昔、巨人には江川卓引き抜き工作を策しての野球協約じゅうりん事件がありました。今度のことでたまたま江川氏も関係者として登場していたことで、想起させられたのでした。今回の手記なども読物としては面白かったとは言っておきましょう。今後事実も明らかになっていくでしょうから。

2011年12月26日 与謝名 阿寒