ジェフリー・ディーヴァー「獣たちの庭園」

8月12日(日本時間8月13日)、2012年ロンドン・オリンピックが終わりました。3回目の開催になるそうです。

76年前の1936年夏、ヒトラー率いるナチスが政権をとったドイツでオリンピックが開催されました。1933年に首相となったヒトラーは同年「全権委任法」成立させ、ワイマール憲法下の共和制ドイツを実質崩壊させました。そのドイツ・ベルリンでの米国人殺し屋の1936年の活動の話がジェフリー・ディーヴァー(1950年生まれ 米国)が2004年に書いた小説「獣たちの庭園」です。

作家の名前は映画「ボーン・コレクター」で承知していました。でも読み物としてはどの作品もこれまで縁遠いものでした。かってのオリンピックを取り上げていると、たまたま手に取った文庫本(文春文庫 2005年刊)で知り、映画の面白さからの期待で読むことになりました。期待以上の内容だったとだけ言っておきましょう。題名も凝っていたこと読んでわかりました。

ナチス・ドイツの暴虐、人々の生活の息苦しさがどうだったか、描かれています。直視するディーヴァーの姿勢、怒りに満ちています。そして果敢に抗した人たちへの暖かい目線も。

ベルリン・オリンピックで活躍した米黒人選手ジェシー・オーエンスにも登場させたり、出場できなかった(私はこれまでまったく知りませんでした)米国ユダヤ人ランナー2名も名前をのせたりしています。たいへん強い印象を受けました。骨太なしっかりした作家なのです。当時の米オリンピック委員会の姿勢も批判した書き方です。

ディーヴァーのおかげで、今度のロンドン・オリンピックもより楽しく味わえました。平和の祭典、民主主義の祭典というものはいいものです。イスラム教の女性たちも初参加の国も増えました。サウジアラビアからもです。また開会式では医療の無料化の国イギリスを示す企画、閉会式ではジョン・レノンの「イマジン」が演奏、それぞれにくい演出でした。

ナチスドイツ下でのベルリンオリンピックなどのようなこと、ふたたび許したくありません。

2012年8月13日 与謝名 阿寒