加藤紘一氏慰安婦問題を語る

安倍晋三首相が年末サンケイ新聞のインタビューに対し、慰安婦問題で河野洋平官房長官談話(1993年)の見直しを表明したようです。それについてはあちこちで論評されています。

しんぶん赤旗日曜版1月20日号4面が「『慰安婦問題』 河野談話見直し 世界の常識は『人道の罪』」と題しての記事でした。そこに、加藤紘一氏(元内閣官房長官、前衆議院議員、元自民党幹事長)が登場して発言しています。

「右バネききすぎ外交上問題

朝鮮半島出身のいわゆる『従軍慰安婦』問題については、私が宮沢喜一内閣の官房長官だったとき、91年12月から92年7月まで調査しました。

関係資料が保管されている省庁で調べて、『慰安所の設置、慰安婦の募集に当たる者の取り締まり、慰安所施設の築造・増強、慰安所の経営・監督、慰安所慰安婦の衛生管理、慰安所関係者への身分証明書の発給等について、政府の関与があったと認められた』と結論を出しました。その時点で、すでに、政府として『筆舌に尽くしがたい辛苦をなめられた全ての方々に対して、改めて衷心よりお詫びと反省』を表明しました。

私の次の河野洋平官房長官のときに、さらに調査して『強制性』を認めました。この一連の調査や見解をくつがえそうという今の動きに、私としては賛成できないし、右バネがききすぎて、外交的にも大丈夫なのかと思います。

こういう状況になると、当然、近隣諸国が懸念を持つでしょう。近隣諸国ばかりか、アメリカもこの問題に強い関心を持っていることに私も驚いたことがあります。2007年安倍首相・ブッシュ大統領の会談では、安倍首相が『お詫び』せざるを得ませんでした。アメリカは、人種問題という点からこの問題をとらえていたのでしょう。

近隣諸国やアメリカの関心は、軍の強制連行があったかなかったか、といった狭い議論ではありません。全体として人権侵害があり、それを否定するなど考えられないと見ているのです。」

安倍晋三氏は、政治家としての見識は、父方の祖父にも、母方の祖父にも及ばないようです。しかも「戦争を知らない子どもたち」の一人でありながら、日本国憲法九条を認めようとしていない自他共に許す靖国派です。

2007年3月10日付け朝日新聞にと、しめくくりに示されているマイケル・グリーン(元米国家安全保障会議上級アジア部長)発言も引用します。

「(連行)が強制されたかどうかは関係ない。日本以外では誰もその点に関心はない。問題は慰安婦たちが悲惨な目に遭ったということであり、永田町の政治家たちは、この基本的な事実を忘れている」

グリーン氏の発言は間違っているところもあります。永田町の政治家たちは、すべてが忘れているわけではありませんし、河野談話見直しを肯定しているわけでもありませんから。グリーン氏が知っている永田町の政治家たちはなのでしょう。

最近、鳩山元首相が中国を訪問し、南京大虐殺記念館にも足を運びました。総理大臣経験者では3人目だそうです。鳩山氏の中国での言動について、日本の現防衛大臣は、断定ではありませんが「国賊」という言葉が思い浮かんだと、公然と非難しマスコミにも報道されました。私はふと思いました。防衛大臣の発言に「売国奴ではないだろうね」と。なぜなら米軍のためなら沖縄県民の意志と真逆な人のようですから。

2013年1月22日 前荷 進